Noel BauzaによるPixabayからの画像
映画「イントゥ・ザ・ワイルド」は、俳優のショーン・ペンが、ノンフィクション小説「荒野へ(Into The Wild)」に惚れ込み、その原作をもとに作成へと漕ぎ着けた映画です。
主人公は、身の回りの物質や社会といった近代文明を否定し、精神を探求する一人旅に出ます。
(ネタバレあります。)
愛読書は、自然を讃歌するソローやジャック・ロンドンのもので、途中持っていた車を捨て、お札を燃やします。
そして、食べ物は道中で確保するため、銃で狩りを行います。
銃は文明の利器ですが、ここでは置いておきましょう。
鹿を仕留め、血塗れになりながら解体する場面が出てきますが、文明を否定して生きるとは、このようなことを独力で行わなければなりません。
「いのちの食べかた」というドキュメンタリー映画があります。
その内容は、牛や豚、魚や野菜といった人間が食卓で口にする物が店先に並ぶまでの加工の過程を映したもので、一部目を背けたくなる内容が含まれています。
現代社会は極端にまで分業化されてしまったため、屠殺といった現場が隠されてしまっていますが、人間は今一度原点に立ち返り、命を頂いて生きていることを再認識する必要があるかもしれません。
また、世のお父さんお母さんは、加工された食材が右から左に運ばれてくる訳ではないことを、スーパーやコンビニに並ぶ食料品は、多くの人の手が掛かっていることを子供たちに教えるべきだと思います。
小さな子供に「いのちの食べかた」を見せるのは抵抗があると思いますので、例えば、魚釣りへ一緒に行き、釣った魚をさばいて刺身にすることや、芋ほりに一緒に行き、採ったお芋を調理することなどで教えることができ、またそのように直に動植物を解体し食すことは、人間が生態系の一部であることの記憶を呼び起こします。
またそうすることで、余計なものは捕らないといったことにも繋がっていくのではないでしょうか。
先進国に限ってですが、飽食の時代に生きる我々は、本映画の狩りの場面を、食物連鎖を乱してきた戒めとして受け止めたいものですが、人類は生態系を破壊しつつ、現在は飛び越えてしまった感があります。
マグロの完全養殖や人工光による野菜の栽培がその例です。
もちろん、人口の爆発や環境の変動に対する備えとして必要な技術になりますが、極端な遺伝子組み換えなどは、
過ぎたるは猶及ばざるが如し
すぎたるはなおおよばざるがごとし
やり過ぎることは、やり足りないのと同じように良くない
であり危険です。
やはり何事もバランスが必要だと思いますが、その一方で、とことん突き詰めることでしか見えてこない何かもあるはずで、映画の主人公はその原理によって行動していきます。
主人公は途中で恋愛や友情も拒否し、一人でアラスカに向かいます。
しかし、上手くいかないことがあるとやはり孤独を感じます。
到着したアラスカで打ち捨てられたバスを見つけ、そこで生活を開始します。
自ら求めていた大自然や孤独での生の営みですが、思うようにいきません。
そんなとき、主人公はあることに気がつき、手帳に書き留めます。
幸福は誰かと分かち合ったとき本物になる。
Happiness is only real when shared.
孤独の中で出した答えがこれでした。
この言葉は、結婚式での新郎新婦へのスピーチで、
「これからは、嬉しいこと、楽しいことは共に分かち合って二倍に、辛いこと、悲しいことも分かち合って半分に」
などと言われるように、人生の真理でしょう。
また成功者と言われる人たちの多くは、自分の行いが他人の喜びに繋がっていると感じ、その他人の喜びを自分の喜びとして受け取る、分かち合いの循環に生きています。
なお主人公が求めたように、人間は孤独な生き物であり、文学や思想、研究などの発明は孤独の中で創られていますが、それと同時に、人間は決して一人では生きていくことのできない社会的な動物であり、家族や村、会社、国などの組織を造り、その中で生活を営んでいます。
その社会の最小単位である家族は、他の組織とは違った結び付きで、心休まる場所であることが求められるはずですが、主人公は文明だけでなくその家族も否定しました。
それは、発端が両親の喧嘩や出生へのわだかまりからであり、そのわだかまりの答えを見つけるため、いわゆる自分探しの精神の放浪だったように思われますが、最後に幸福を共有することの大切さに気づき、拒否した家族との和解ができたことで観るものの心を解きほぐします。
本作のように、家庭不和の中で育った子供や、感受性の強い子供や、思春期の子供にとっての自分探しや一人旅は、永遠のテーマなのかもしれません。
本作のように、家庭不和の中で育った子供や、感受性の強い子供や、思春期の子供にとっての自分探しや一人旅は、永遠のテーマなのかもしれません。
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